S056明治小史年間紀事
明治十年二月十五日御届?
出板人 大倉孫兵衛 日本橋通壱丁目拾九番地
画工 月岡米次郎 南金六町十四番地2
價六銭
鹿児島縣下賊徒蜂起之事件
干時(ときに)明治十年第一月西海の浪平穏(おだやか)ならず政府此に注目あり陸軍士官命を奉じて汽船赤龍丸へ乗組鹿児島へ入港す 抑此港ハ東北ハ大隅に属し西ハ薩摩南ハ海峡に沿ひ港門至て狭し 中央に桜島あり此島より鹿児島港へ海上一里なり 官吏ハ同所製造所の弾薬を積込んとする際同縣士族等遮止め(さえぎりとどめ)弾薬を掠奪し是を暴挙の手始めとし数千人屯集し西郷氏に迫て隊長たらん事を乞ふ 同氏ハ確乎として動かず諭すに大義以て為と雖も伏せず これにより謝絶して跡を暗せしかバ(くらませしかば)桐野篠原の両氏を巨魁と仰ぎ諸方の士族を煽動して其勢一万余人 三手に分れ一手ハ熊本へ繰出し官軍と激戦す 然るに西郷軍に将たりと云 是不得止の(これやむをえざるの)謂なるか 同氏ハ維新の功臣にて美名世に轟しも桜島の花をちらし悪名を万代に残さんとハ可惜〃〃(をしむべし をしむべし)
静岡県立中央図書館での分類は
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国会図書館蔵016、大英博物館蔵B013-A、Bの3枚の異版である。左の上から順に国会図書館、大英博物館A、B、静岡県立中央図書館蔵の作品である。
この4枚を比較してみよう。大英博物館所蔵品はいずれも赤がくすみ、青が強く発色している。また、背景の岩肌や軍服のしわなどに中間色の階調が刷られているのだが、このコントラストがそれぞれでかなり違う。その階調は強い順に記すと大英A→大英B→静岡→国会となる。(これは右図の戦艦の煙でよく確認することができるだろう。)これらが全体の印象を強く決定づけ、ドラマチックな情感はこの順番で強調されている、つまり、大英Aが一番劇的である。更に、国会図書館蔵は中図の煙の表現においてグラデーションが入らずまた赤が弱く、ほかの3枚と極端に違っているが、これもドラマ性を減衰しているといえるだろう。細部に目を向けるならば、国会図書館蔵は奥の方の波の形がよく見える、とか、岩肌の表現は静岡県立中央図書館蔵の色使いが一番バランスがとれている、などの特徴があるが、この劇的な構図にあっては全体を一目見たときの印象が第一といっていいだろう。
大英Aと静岡のみ赤色で月日が印字されている。日付は解像度が低く正確には読み取れないが、大英Aは三月十四日か十五日、静岡が二月十四日か十五日と読める。静岡県立中央図書館では二月十四日と読んでいる。