S053鹿児島征討記
明治十年三月十七日御届
画工 歌川国松 横濱吉田町三十二番地
出版人 綱島亀吉 浅草瓦町十二番地
價六戔
西郷隆盛ハ川尻を本陣となし新政大総督征討大元帥西郷吉之助と大書したる標札を掲げ日夜軍事を議し居たりしが三月一日に至て官軍大挙し此所に進撃したりけるが賊軍ハ之と聞くより一軍を以て伏兵となし一軍ハ直に官軍と激戦し偽り敗して兵器を捨て散々の體にて敗走なしたりけるを官軍ハ勢に乗して短兵急に進撃したる所ろ豈圖らんや(あにはからんや)横合より突然として一乎の(いっこの)伏勢起りて官軍と大激戦す因て(よって)官軍一時利を失ひ一先引退きたりと
右図 西郷隆盛、山口小右衛門、児玉八之進、西郷小平、渕部高照
中図 平山新介、桐野利秋、浅井直之進
左図 池上四郎、永山矢一郎、篠原国幹、村田新八
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「036鹿児島征討記」 国立国会図書館蔵(上の図)の異版である。
違いを比較して国会→静岡の順に表記してみよう。題簽の背景が紫と赤の二色のぼかしを使用→赤の単色、経年劣化あるいは撮影条件によるのかもしれないが、青と黄色が濃い→青と黄色が落ち着いている。刀のつばや衣装の房などの細部に赤を配色していない→赤を配色して細部を引き立てている。左図左下の地面の表現灰色と緑の境界がとけ込んでいる→境界がくっきりと際立っている。以上のような細かい違いはあるものの他はほとんどかわらない。題簽の背景色の違いから同じ日の刷ではないのだろうが、一続きの作業日程の中での異版と言っていいのではないだろうか。