S027鹿児島勇婦揃 かごしまゆうふぞろい
明治十年八月廿三日御届
出板人 井上茂兵エ 大傅丁二丁目十四番地
画工 橋本直義 上野北大門丁十一番地
右図 篠原國幹妻、村田新八妻、別府新助妻、池上四郎妻、永山弥一郎妻
中図 西郷隆盛妻、桐野利秋妻、河野四郎娘
左図 伊集院重成母・孫子、逸見十郎太妻、篠原娘國女、淵辺高照妻
静岡県立中央図書館での分類は
請求記号 | K915-108-033-031 |
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画題(題名) | 鹿児島勇婦揃 |
絵師(画工名) | 楊洲斎周延印:橋本直義 |
版元 | 井上茂兵衛 |
出版年 | 明治10年6月23日届(1877) |
員数 | 3枚続 |
版型 | 大判 |
彩色 | 錦絵 |
資料名 | 上村翁旧蔵浮世絵集(33) |
カテゴリ |
/浮世絵/31集~40集/33集-周延 |
このページの画像は静岡県立中央図書館のデジタルデータを利用して構成している。また、データに関しては東京大学史料編纂所錦絵データベースを参考にした。
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左が国会図書館蔵(以下国会)の「092鹿児島勇婦揃」右が当ページの静岡県立中央図書館蔵(以下静岡)の作品である。最も目をひく違いは背景の幕と旗の色だろう。国会の幕は上部が白く抜けているが、静岡は紫の地が全体にわたっており、丸に十の字の薩摩藩のマークが際立っている。更に、国会の方は旗が白地に黒い文字であり、静岡は赤字に白い文字となっている。この背景のほとんどを占める部分の大きな違いは、まるで別の絵であるかのような印象を与える。他には馬の毛並みの色、タイトルの地の色、などに刷色の違いがあるが、着物や装具の色などはあまり変わっていない。全体の印象が大巾に変わっているように感じられるが、細部は実のところあまり変わっていないということのようだ。色以外にも異なっている点がある。左図の前方で乳飲み子を抱いている女は国会の方では「伊集院重成母」とのみ名札が掲げられているが、静岡の方ではすぐ隣に『孫子」と名札が追加されている。あるいは、削除されている。着物の柄の細部の刷りは、国会の方が細かく残っているようだ。
さて、どちらの作品が先に刷られたものかということが気になるところだが、はっきりした証拠が残っていた。
国会の方の左図の左端上部に「淵辺高照妻」という名札があるのだが、少し左に傾いている。そして、静岡の方ではこれが直立するように修正されている。斜めになっていた名残が、はっきりと残っているのだ。下の図をご覧いただきたい。
国会が先で、静岡が後ということになると、背景の幕のぼかしを取りやめて、薩摩のマークが際立つようにした。旗も目立つようにした。そして、色のバランスを考えて馬の色を変えた。さらに、説明を補足して、乳飲み子の存在を強調し、名札の並びを整えた、と言ったところだろうか。
左図は静岡県立中央図書館蔵の「鹿児島勇婦揃」国会図書館蔵の方で左に傾いていた淵辺高照妻の名札を垂直に修正しているが、その修正の跡がはっきりと残っている。
つまり、後から刷られた作品ということになる。