u012薩摩大軍記
雷 年基 画 印
ホリまさ
校筆 年正 印
校筆 年一 印
綿喜
十年四月十三日出板御届
定價三枚六戔
編輯 鈴雷之助 第二大区九小区難波○地五番丁十八番地
出板人 前田喜兵衛 第二大区四小区塩町通四丁目四番地
右図:タイトル、記事
中図:野津少将、桐野利秋
左図:佐瀬一格、山形参軍、河路少将、曽我少将、西郷隆盛、
紅花烟中に飛び青柳風前に櫛る(くしけづる)翆黛蛾眉(緑の眉と細い眉、いずれも美人を形容している)昨日縫裁する掌にて今日は白刃を打振ふ 心も猛き武夫(もののふ)の妻妾(つま) 死で逢ふ瀬を假の夢 さしてよるべも白妙の 肌さへ寒き春の夜に 慣し薩摩の空こへて 親や我児に生別れ 月日も長き黒髪を 後の方へ結びさげ 襷十字に綾千鳥 白柄の長刀振袖の 模様ハいとど窕女(たおやめ)が 夫に随ひ兄に纉き 死バ共にと従軍(いでたち)は 昔の巴板額も かくやと想ふ形粧(すがた)にて 紅粉隊(ふじんたい)の香りハ烈女節婦の名と 後の世迄も芳きに 共に國賊の名を免れぬ 女の不幸 嗚呼憐べし(あああわれむべし) また惜むべし(またおしむべし)