D107鹿児島征討記肥後国二重嶺戦争之図
かごしませいとうきひごのくにふたへとうげせんそうのづ
明治十年四月十六日御届
出版人 山本平吉 新葭丁二番地
画工 橋本直義 上野北大門丁十一番地
右図 陸軍少将三好重臣君
左図 桐野利秋 貴島卯太郎
明治十年三月下旬肥後と豊後の國境(さかひ)なる二重嶺の近傍に在る賊軍を討破らんと大分縣より向ひし官軍其隊を三手に分ち攻撃なすに賊将防戦の術を尽し間道樹林の中より討て出或ハ此処彼処の物蔭より起て頗る激戦なしたりとぞ又賊方に女隊在て最勇敷出立にて若きハ皆赤き脚半何も薙刀を携へ居れバ実往古の巴班額又阿能の局が本能寺に於ての働も斯こそあらんと思れたり
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上が国会図書館の「西南戦争錦絵」に分類されている作品「087鹿児島征討記 肥後国二重嶺戦争之図」、下は当ページの作品で同じく国会図書館蔵である。
下のD107がどう違うか、違いを並べてみよう。
1、地の色が空とほとんど同じになって平板な感じになっている。そのため、一番左端の女性の顔の周りに色違いの空白ができて不自然になっている。
2、左図の背後の馬の色が薄い。
3、記事の色づけのデザインが変わっている。
4、三好少将のズボンの色が白から紫に変わっている。
色むらや損傷などを見ても明らかな様にD107の方は保存状態が悪いようだが、それ以外に上に挙げた違いがある訳で多分D107の方が後刷であろう。なぜなら、色の情報が不正確になっていると見受けられるからである。三好少将のズボンの色は兵隊の上着の色と同じでは変だし、とりわけ左端の女の顔の周りの空白の不自然さは背景の色を明るいグリーンから暗いグリーンに変えたことに起因している。人物が沈んでしまい、画面を平板なものにしてしまうような色の変更が何故行われたのかは大きな疑問である。記事を始めとする文字情報は全く変わっていない。