S009西南雲晴朝東風 百姓作蔵住家の場
おきげのくもはらうあさこち
明治十一年三月 日御届
出版人 福田熊次良 長谷川丁廿番地
画工 荒川八十八 浅草小島丁丗五番地
彫工 弥太
右図 西條高盛 市川團十郎 岸野の妻おあき 岩井半四郎
左図 百姓作蔵 市川左團次
西條高盛 市川團十郎
今御身らが今日をふけいきなりとかこつのも いハゆる國のおとろへにて時世につれてのことなれバ たれのとがともいふにもあらず 方今三府六港をはじめ都下ハ不学のものなきゆへかく開化の域にすすめど 遠境僻地にいたりてハ有学のものまれなるゆへ いまだぶんめいのときにいたらず されバこん日大政府のあつき朝肯をわきまへざれバ不平をならすものおほく そのおよバざるをしらずしてやくすれバととふをむすび煽動なすものあるゆへに 天下おだやかならされバここに全国のふけいきを生る(しょうずる)なり おひおひ遠境僻地をも学校あらざる所なく教喩おろそかならざれバかね輩ハ云ふに及バず其親たる頑固の者も終に学事の徳をしり 文明開化に進歩なさバ 凡(およそ)三千五百万の人民兄弟の心を生じ 全国一和なす時ハととうを結ぶ者もなく 全く天下泰平にて鼓腹の時にいたるべし 夫とても遠からざれバいまのこんくを打(うち)つがひ昔かたりにしたがよい
百姓作蔵 市川左團次
かうお見受申た所が戦争などにおかかり合なく あなたハ楽な御身分のお方のやうにぞんじられます ゐなかものの事などハ御存じハありますまいが 先(まず)百姓といふ者ハ米ハもとより穀物野菜作つて売るので今日の活計を立て参りますが 四五年此かたふけいきに物の売れのわるい所へ此春からのひごの戦争 長いことも有まいと思ひの外(ほか)に四月ごし立てもいまだにかた付ず ばつたり物がうれなくなり私計りじゃありませぬ 此近郷近在のぶげんハしらず 小前のものハひといなんぎをいたしまする
◦ヿその西條卿といふハ御一新のはじめから人にすだれて天朝へ力を尽くしたお方ゆへ くんこうによつて大将の位にまでのぼりしが 何か心にかなハぬことでもあつてのことかぞんじませぬが 辞職なされて国へかへり 私学校を取立て(とりたてて)多くのせいとへけうゆ(教喩)なし ひまさへあれバ田はたへ出て農業なすをたのしみに その身におごりハすこしもなくこまる者にほどこして どんなりつぱなおかたでも又ハ水呑百姓でもおなじやうになさるゆへ せかいにあんなおかたハないと薩日隅の三ヶ国でハ邦の仏のやうに思つて わづか三才の子供でも西條卿といふ名をしたふこの人望ハ金銀でハできぬこと うけたまハれバ学問もすぐれたお方でありながら何ゆへこんなくハだてをなされましたことなるか ぐまいの生れの私共にハ一円がてんが着ませぬ
静岡県立中央図書館での分類は以下の通り
請求記号 K915-108-025-025
画題 西南雲晴朝東風百姓作蔵住家の場
絵師 豊原国周筆印:荒川八十八
版元 福田熊次郎
出版年 明治11年3月届(1878)員数 3枚続 版型 大判彩色
錦絵資料名 上村翁旧蔵浮世絵集(25)カテゴリ /浮世絵/21集~30集/25集-国周
このページの画像は静岡県立中央図書館のデジタルデータを利用して構成している。また、データに関しては東京大学史料編纂所錦絵データベースを参考にした。
画像をクリックすれば拡大画像をご覧頂けます。
細部を見るにはこちらからどうぞ。別画面が開きます。
少し時間がかかります