095征韓論之圖
せいかんろんのづ
明治十年七月五日御届
出版人 松下平兵エ 本郷元富士丁六番地
画工 橋本直義 上ノ北大門十一番地
彫 秀勝
價六戔
右図:江藤新平・大木司法卿・西郷隆盛・桐野利秋・榎本武陽君
中図:板垣参議・三条大政大臣・前原一誠
左図:二品有栖川宮・岩倉右大臣・大隈参議・大久保内務卿
頃ハ明治四年とかや外務卿副島公を特命全権公使として朝鮮え遣はされしにかの國の官人ども不礼の事ども多かりけれバ副島公帰朝の上此よし上申有りけるにぞ廟堂の諸大臣朝鮮人の不礼を糺す師(いくさ)の士を出さんと征韓論起りしを岩倉右大臣その否なるを弁明せしとぞ
柳々子仙果
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この画題では周延は3種類の絵を描いている。
095では御簾は左図に描かれておりその前を固めるのが三条大政大臣・二品有栖川宮・岩倉右大臣であるが、13名の人物が描かれており、名札は12枚である。
096では、このページでご覧の通り、御簾は中図にあり、前を固めるのは岩倉右大臣と二品有栖川宮である。また、人物は17名、名札は16枚である。
097では左図に御簾が描かれ、前を固めるのは仁和寺宮・有栖川宮・岩倉具視公である。人物は16名、名札は16枚、一見合っているのだが、実は右図の後ろの方の人物の数と名札があっていない。実際のところ名札は15枚と見なしていい。
さて、すべての絵で、人物の数が名札より一名多い。そして、その人物はいずれも御簾の真下に描かれている。もうお分かりだろう、明治天皇が、はっきりと絵の中に描かれていたのである。
明治神宮のホームページによると「明治天皇の御尊影といえば代表的なのが明治神宮宝物殿にある御肖像画です。(中略)明治21年、陛下37歳(数え年)のときの御尊影です。実は撮影されたのではなく、コンテ画で描かれたのでした。」http://www.meijijingu.or.jp/qa/gosai/10.html
とある通りキヨッソーネが描いたものが、最も有名である。そして、写真嫌いの明治天皇は写真もそれほど残っていない。その意味で似顔絵ではないが、明治天皇の姿を描いた絵の存在は珍しいと言っていいだろう。
静岡県立中央図書館に異版がある。「S047征韓論之圖」である。両作ほとんどかわらないが静岡県立中央図書館所蔵の作品の方が背景の幕の紫と墨が濃い、赤が朱色に近い、コントラストが全体に強いといった特徴が見て取れる。その為であろうか、細い線がつぶれているのが、軍服のモールなどに顕著である。タイトルの題簽の色が異なるのが、最も大きな違いといっていいだろう。